異世界にて
角田光代の本のなかに「天国」という2頁ほどのエッセーがある
これがとても好き
例えばこんな風・・・
~帰り道迷いこんだ裏道で、枝という枝に集う蛍がいっせいに光を放っている大木を見た。懐中電灯を消してしんとした心でそれを見上げた。波打ち際を歩けば足元で夜光虫がちらちらと青く光り、青い光の上で知り合いになった人たちと明日の約束をいいかげんに交わしてーまた明日、あの時間、このへんでー手をふりあった。夢のような時間だった。人が快適に生きていくのに必要なものは、実はそんなに多くないということを知った。~
「バスの中」というエッセーもじんわり好き
そこは どこかべつの時間軸のなかの風景のようで
そして 自分もいつか行ったことがあるような気がして
たったひとりで 世界に溶け込んでいるような
ひとりですらないほどに