あおそら

自分のための走り書きらくがき帳 

山によせて 富松良夫

 ひかりのヤをはなつ朝

 山は霧のなかに生れ

 むらさきの山体は

 こんじきの匂ひをもつ

 あたらしい日を信じ

 あたらしい世界のきたるを信じ

 さらに深い山の発燃を信じ

 にんげんの哀しさも

 国の面する悲運のかげも

 世界の精神的下降の現実も

 わすれはてるわけではないが

 いまこのあざやかな

 朝のひかりのおぼれ

 悠々と非情のツヨサにそびえてゐる

 山にまなぼう

 

富松良夫作品集 (1977年)

富松良夫作品集 (1977年)