生きると死ぬ 死ぬと生きる

人生の時間は有限なのである。全く当たり前のことなのだが、いつも人はそれを忘れる。忘れて他人事みたいに自分の人生を生きている。時間は前方へ流れるものと錯覚しているからである。人生は、生から死へと向かうもの。死は今ではない先のもの。しかしこれは間違いである。死は先にあるものではない。今ここにあるものだ。死によって生なのであれば、生としての今のここに、死はまさにあるではないか。

こういう当たり前にして不思議な事実に気がつくと、時間は前方へ流れるのをやめる。存在しているのは今だけとわかる。流れない時間は永遠である。一瞬一瞬が永遠なのである。有限のはずの人生に、なぜか永遠が実現している。永遠の今は、完全に自分のものである。人生は自分のものである。この当たり前には、生きながら死ななけりゃ気づかない。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。来るべき年に幸あれ。

池田晶子「41歳からの哲学」

41歳からの哲学

41歳からの哲学